八ッ場ダムに沈む町1
川原湯温泉
2013/12

 吾妻線へ進む  


ダム計画ができて50年。
世情や政治に振り回され続け、間もなく湖に沈む
温泉街と鉄道がある。
最後に残った温泉宿3軒と、源泉に建つ1軒の共同浴場を、
撤去秒読みになって訪れた。




ダムに沈む駅はただ1つ、川原湯温泉駅のみ。
吾妻渓谷の遊歩道入口にもあたる谷底の駅で、
JR吾妻線に唯一残った木造駅舎である。




右下の緑色が駅の跨線橋。
その上に湖面1号橋(やんば大橋)がそびえ立つ。
ここまでダム湖の湖面が来る。




ちょうど橋脚の横から分岐している道路が
川原湯温泉街の入口。




入ってすくの郵便局前からやんば大橋を見返す。
かつて22軒の温泉旅館と、置屋や飲食店が並んだ
川原湯温泉は、移転や廃業が続き、現在は3軒のみ。
飲食店も土産屋も店を閉め、建物の撤去が進んでいる。




源泉の上に建つ、共同浴場「王湯」。
3つあった共同浴場で残った最後の1軒。
ここも間もなく移転して撤去される。




石造りの男女別看板が重厚。
これは移転先でも使用されるのだろうか。




脱衣所からさらに階段を下りていく内湯。
崖にはりつくように建てられた川原湯では、
こうした「下りて行くと温泉」という場所が多い。




王湯のすぐ上に建つ鳥居は、移転予定の神社。
鳥居の奥に白いドーム型の建物が見えるが
これが新源泉。ここはダムに沈まない。
ただ、旧源泉とは量も質も異なるとか。




ほぼ同じ場所から王湯を振り返る。
たったこれだけの標高差で、ダムに沈むかどうかが決まる。




王湯すぐ下のやまきぼし旅館に泊まったが、その
玄関先から目の前の斜面に「586m」看板が見える。
これが水没線。満水時はここまで水が来る。




やまきぼし旅館には、温泉王・嵐山光三郎氏が絶賛し
「崖湯」と名付けた露天風呂があり、不動大橋が見える。
ほとんど標高差がないように感じられるのに、
ギリギリのところでこの温泉宿も水没する。




もらったパンフレットを利用して、王湯と新源泉の位置(多分)を
入れてみた。濃い青色が湖面らしい。△クリックで拡大



同じものを、道の駅にあったジオラマで。
あと少し計画水面を下げれば、王湯や旧源泉はたすかったのに。
△クリックで拡大




吾妻線に乗るため、車で隣の長野原草津口駅へ。
その前の川の土手にも水没線看板があった。
道路からほんのわずかに見下ろした程度の位置。



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