八ッ場ダムに沈む町2
JR吾妻線
2013/12

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付け替え新線と接続するため、長野原草津口駅も
建て替えられていた。上り列車に乗ると、間もなく
新線との接続部が見える。今年秋には切り替わる。




川原湯温泉駅を過ぎると右手が吾妻渓谷になる。
橋を渡るとすぐ看板とコンクリ基礎が見える。
ここが八ッ場ダムの本体。(白いチェックの座席シート
が写り込んでいて、ダムに見えるが違います)




岩島駅の手前で、同じく付け替え新線との接合部を過ぎ、
その次の矢倉駅で降りて、下り列車を待った。
無人で雰囲気の良い駅だった。




再度、川原湯温泉駅を通過する。
岩島駅から長野原草津口駅までは新線に置き換わるため
この駅は勿論、前後の線路も廃線となる。




駅を出てすぐ、やんば大橋の下をくぐる。幻の湖底を走る列車。




これは1つ上流の不動大橋。ここは既に供用が開始
されていて、車で渡ることができ、付け根に道の駅がある。




再度車に戻り、線路と並走する国道145号を川原湯方面へ。
特急と並走した。この国道も、線路と同様、湖の底に沈む。




不動大橋の下を走る特急草津。間もなく廃線となり、
トンネルだらけの付け替え新線にかわる。




これは、宿泊したやまきぼし旅館の部屋の窓から
見下ろした吾妻線。これも間もなく幻の風景となる。




廃線区間には、「日本最短のトンネル」樽沢隧道がある。
列車が通ると短さが際立つ。




冬枯れで土砂崩れのように見えてしまうが、7.2mのれっきとした
トンネル。水没はしないが、付け替えによって列車は走らない。

なお、上はやんばバイパスの法面通路から、
下は国道145号(旧道)の歩道から撮ったもの。
2014年秋、旧道は線路付け替えと同時に廃道となる。


ここからは余談。川原湯へ向かう前、四万温泉に立ち寄った。



こちらも鄙びた温泉街だが、川原湯のように廃墟ではなく
落ち着いた温泉街が広がる。行く途中には「メロディロード」
があり、「千と千尋の神隠し」テーマ「いつも何度でも」だった。
(アスファルトの反射音が音楽に聞こえるようになっているもの)




四万温泉には、「千と千尋〜」の湯屋のモデルの
1つと言われる「積善館」があるからだろう。




最奥の日向見薬師堂も霧氷の世界だった。


民主党政権になって、突然中止と言われたことで
一躍脚光を浴びた、群馬県の八ッ場(やんば)ダム。
実はここが、50年前からダム計画の変更変更で
振り回され続けていたことを知ったのは、つい最近。

沈むことがわかっているから、大規模な改築もできず、
しかし工事は進まず、延期延期で、古びて行くだけの街。
大女将は、芸者が闊歩していた華やかな時代を知ると言う。

吾妻川に沿って動くとわかるが、この周辺では、川がV字に狭まって
その上流が広いポケットになっている「ダム建設地の鉄則」を
満たしているのは、ここ吾妻渓谷だけ。あとはずっとのびのびと広い。
一応、渓谷の上流部に堰堤が来る計画のため、渓谷の大部分は
水没せずに済むようだが、川原湯温泉はどうしようもなく…。

JR吾妻線も、最も車窓の綺麗な部分が付け替えられ、ほとんどが
トンネルになる。ダム湖が見えるのは新川原湯温泉駅前後と
その先のトンネル合間のほんの一瞬だけ。
ただ、洪水調整湖も兼ねるため、満水状態が見られるのは短い期間。
とはいえ、建物はほぼ全て撤去されてきているため、渇水でも
「ダムの底に昔の建物が」という風景は見られないようだ。

反対派のサイトを見ていると、地質の問題、温泉水中和で発生する
砒素の濃縮問題、といろいろ不安のある計画で、現在ですら
酷いと思える大規模な自然破壊がさらに進むことを考えても
本当に計画を進めるのが正しいのか、気にはなってしまう。

とはいえ、50年間振り回され続けた温泉街の人達のためにも、
もう余計なことはせず、新観光地であるダム湖の完成と、
移転の無事完了と繁栄を祈りたくなった旅だった。




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